私と彼のこれまで、そしてこれから

彼と出会ったのは転職先の小さな会社でした。
私は失恋したばかりで、しばらく恋愛はしたくないと日々の仕事に邁進していました。私は事務、彼は営業職として働いており、普段接することはほとんどありませんでした。
初めて会話らしい会話をしたのは、月末の処理に追われて残業した日でした。何とか業務を終え帰ろうとした時、『お疲れ様。急ぎじゃなかったら、お茶でも飲んでお疲れさん会しない?』と声をかけてきたのが彼でした。
初めから既婚者であることは知っていたし、彼も『そういうつもりじゃないから、安心して』と言っていたので、まさか自分不倫関係になるなど最初は思っていませんでした。彼はただ、会社に仲のいい話し相手が欲しいだけなのだと。
考えてみれば、本当にその気のない人が女の子と2人で出歩こうなんて言わないですよね。自分でも分かるはずなのに。多分、私も寂しかったんだと思います。恋愛関係になるのに、そう時間はかかりませんでした。
頻繁に朝帰りをするようになった彼の裏切りは程なく奥さんの知るところとなり、子供のいなかった彼夫婦は協議の末、彼が家を出るという形で離婚しました。慰謝料もそれなりに発生したようですが、何故か私には請求されませんでした。やがて彼と私は入籍し、晴れて夫婦となったのです。
それから数年たち、娘が生まれて一年が過ぎた頃。彼の朝帰りが目立つようになってきました。あぁ、新しいヒトが出来たんだ…不思議と怒りは湧きませんでした。そういう人だと分かっていたのかもしれません。育児に協力的でない彼に愛情も冷めていたのかもしれません。
結局私も彼と別々の道を行くことになりました。前の奥さんが私に慰謝料を求めなかったのは、こうなることが分かっていたからなんでしょうか。
私は浅はかで寂しい女でした。でも、今の自分には守るべきものがあります。大きく道はそれてしまったけど、私の横であどけなく笑う娘のために、もっと強くありたい。そう強く思うのです。